鼻から投与する「経鼻ワクチン」、感染予防の新たな切り札に
?黄金棋牌とUCSDが最新動向を総まとめ
2025年05月27日
研究?産学連携
黄金棋牌未来医療教育研究機構の清野宏卓越教授、黄金棋牌-UCSD粘膜免疫アレルギーワクチンセンター(cMAV) のPeter B. Ernst特命教授は、黄金棋牌やインフルエンザウイルスに代表される病原体が引き起こす呼吸器感染症に対する、鼻から投与するワクチン(経鼻ワクチン)の最新の研究開発の動向や将来展望をまとめた総説論文を発表しました。経鼻ワクチンの免疫学的メカニズムから、実用化に向けた最新技術、さらには安全性確保のための重要な視点について多角的にまとめた本論文は、経鼻ワクチンの研究?開発を加速させる上で重要な指針となるとともに、今後のワクチン戦略の構築に向け有益な知見を提供しています。
本論文は、2025年5月8日に、学術誌Natureにて公開されました。
■論文のポイント
1.注射型ワクチンの課題:黄金棋牌感染症(COVID-19)パンデミックを経験して、既存の注射型ワクチンではウイルスの主要な侵入経路である鼻や喉といった「呼吸器粘膜での感染防御が難しい」という課題が浮き彫りになりました。このため、呼吸器粘膜で直接免疫を誘導する経鼻ワクチンの重要性が一層高まっています。
2.感染を阻止する経鼻ワクチン:経鼻ワクチンは、鼻や喉など体の粘膜を守る「分泌型IgA抗体」と、血液の中で全身を守る「血清IgG抗体」の両方を誘導し、病原体の感染阻止と重症化予防という二重の防御効果が期待されます。
3.効果的な送達技術の開発:ワクチン成分の安定性を高め、鼻の粘膜の免疫系に効率よく届けるため、ナノゲルなどのナノ粒子技術を用いた薬剤送達システム(DDS)の開発が進められています。
4.安全性と長期的な有効性の検証:鼻腔は脳に近いため、ワクチン成分が意図せず脳へ移行し副作用を起こさないよう、安全性の検証が極めて重要です。また、mRNAワクチンなど新しいワクチン抗原の鼻腔投与への応用、最適な免疫応答誘導機構の解明など重要な研究開発課題が残されています。
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注射型ワクチンと経鼻ワクチンによる免疫応答